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私の死亡記事にはこれが載るんだろうな、という作品



こんにちは、ココマスダ です。


今日はアメリカの大統領及び上院議員等の選挙の日で、世の中白熱しております。

今年は Black Lives Matter の抗議活動の際の暴動及び剥奪があったため、選挙後の暴動を予想して、ウィンドウを板打ちした店やビジネスも多い、という報道をニュースでご覧になったかと思います。この国がここまでj狂ってしまったのは本当に悲しいことです。暴動と剥奪は、右翼でも左翼でも抗議活動と何の関係もなく、どさくさに紛れて起こなわれる犯罪ですから。


今晩彼氏には「選挙中継を一緒に見ようよ。」と誘われたのですが、

今日中にどうせ確かな結果は出ないだろうし、ストレスで気が狂いそうになるだろうから断って、家で大人しくしていることにし、昼間は出来るだけ選挙のことを考えないようにして、しばらくおざなりにしていた仕事を片付けました。


私の代表作とも言えるポスターが、手元に何枚残っているかをチェックし、スキャンしてウェブサイトのショップに載せることなのですが、無事済んだのでご覧になれます。→ こちら


25年前に国連を通して手掛けた仕事で、1995年に北京で開催された「第4回世界女性会議」のためのポスターです。これが大変な仕事で、ニューヨークの国連本部に何度も出かけて各国の国連代表たちとミーティングを重ねて制作しました。


世界中の女性が納得する、国際女性会議に最適なイメージは何か。普通だったら様々な人種の女性をたくさん描くところですが、私は細かく大人数を描くのは一番苦手なので、ひとりで全員を表す女性を描いてしまおうというアイディアを提案してスケッチを提出したところ、満場一致で通りました。


でもその後が大変で、、、。

あ、この話はかなり以前にブログかフェースブックに描いた気がするので、読んだことがある方には失礼。

歳をとると繰り返しが多くなるのは避けられませんよね。

「先生、そのお話は以前お書きになりましたよ。」と注意してくれる若い助手が欲しいなぁ〜。


私はその頃、モディリアーニのように首が細くて長い女性を描くのが好きだったのですが、アフリカのとある国の代表の女性が、


"Intelligent women have thick necks. The neck has to be thicker!"

(賢い女性の首は太いものよ。首はもっと太くないと!)

と言い張ったのです。


ハァ〜?ですよね。首の太さとインテリジェンスに関係なんかありません!

彼女の首は太かったか、ですか?もちろんです。態度も迫力満点の、かなり太めの黒人女性でした。


彼女の意見に真っ向から反論する人はいず、私もその頃はまだ若くてシャイでしたから(あったんですよ。そういう時が!)スケッチの女性の首を太く直して次回のミーティングに戻ったのですが、それでも気に入ってもらえませんでした。


「もっと太くないと!」


それを何度か繰り返した挙句、私は「これ以上太くは出来ません!」と談判してスケッチを通しました。

その時には、「何だこの首?」と思う太さ。

仕上げたイラストレーションは、アート紙にエアブラシ。ポスターが 55 x 83 cm と大きいので、オリジナルも結構大作です。


色も各国代表の意見を取り入れなければならなくて自分の好みではないし、ポスターのデザイン(文字やボーダーの処理など)はやらせて貰えず、国連のアートディレクターが4色のボーダーを加えたのは非常に不満でした。首の太さの問題もあって、当時は満足な仕上がりとは言えずにポートフォリオにも入れなかったのですが、国連関係での評判は良く、世界中の国際連合タイプのオフィスに今だに飾られているらしいのです。


その後国連のポスターを数枚描き続けられたのも、米国最高裁判所の何年にも渡るポスターのシリーズを手掛けられたのも、数年前に国際労働機関からポスターを頼まれたのもこのポスターのお陰です。一般企業からも、「あのポスターのように多様な人種を表した〜」作品を描いて欲しい、と随分仕事もいただきました。

2000年に出版された "For a Better World: Posters from the United Nations" には、私の作品ではこのポスターともう一点、国連ハビタット会議(人間居住会議のポスターが掲載されています。


国連のために描いた作品は、かなりの制約とプレッシャーを受けて制作したので自分では気に入っているとは言い難いですが、今私のキャリアを短く要約するとしたら、そしてもし私の死亡記事が書かれるとしたら、多分「第4回世界女性会議」のポスターを制作したことが含まれるのだろうな、と思うし、ま、力強い作品なんだろうな、と思えるようになりました。


ちなみに、唯一国連のデザイナーが手を加えることなく私がデザインして、自分では満足、ニューヨーク本部でもOKをもらった下のポスターは、最後に(マフィアと関係していると噂されていたマッチョな)イタリアの男性ディレクターが、"It's too feminine!" (女性っぽすぎる!)と一喝してしたそうでボツになりました。残念。



「第4回世界女性会議」は、ヒラリー・クリントン氏が有名な演説を行っただけでなく、世界的に女性の地位を向上させた歴史的な会議なのです。私はその頃はそれほど政治に興味を持っていなかったのですが、女性に取って重要な会議のポスターを手掛けられて本当に良かったです。


以前は数年毎に、「もし残っていたら譲ってください。」という連絡をもらっていました。しばらく音沙汰なかったのですが、数週間前にイギリスの女性からメールをいただきました。


"It is the most beautiful artwork but is also incredibly important, even more so this year, 25 years on. "

(最高に綺麗なアートワークであるだけでなく、25年経った今、更に非常に重要な作品です。)と。


こんな称賛のお言葉をいただく事が出来て、心から嬉しく思いました。

で、どのぐらい残っているかとチェックしたら、英語版は自分用にスチレンボードに貼り付けてもらったのが残っているだけで完売状態。フランス語版、アラビア語版、ロシア語版が2枚づつ、中国語版が1枚残っているだけでした。自分が手掛けたポスターなど、「取っておけば価値が上がるだろう」なんて考えなかったのは確か。まだ自分が元気なうちに、私の作品が欲しい方がいたら買っていただいて出来るだけ在庫は減らし、新しいことに挑戦する資金にしたいと思ってます。


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