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高田健三さんの追悼記事を読んで、自分が駆け出しの頃を思い出しました。




こんにちは。ココマスダ です。


日本が誇る世界のケンゾーこと高田賢三さんが、コロナウイルスへの感染によってあまりにも若く亡くなり、悲しんでいる方も多いと思います。


私はケンゾーの服は自分の趣味では無かったのですが ー 10代の頃は、高田さんの同期生の松田光弘さんの「ニコル」の大ファンでした ーその生き方は尊敬して彼に関する記事はフォローしてきたし、ネットで見つかる追悼記事は興味深く読み、自分の駆け出しの頃のころと重ねて思い出しています。


高田さんはパリに開いた最初のブティックの店名を「ジャングル・ジャップ」とし、それは「日本人であることを逆手に取ったちゃめっ気のつもりだった」だったのに、これが米国の日系人団体から「ジャップは日本人への蔑称だ」と抗議を受けて、訴訟沙汰にまで発展したそうです。実は私も彼と同じようなことをしました。


私が立ち上げた最初のビジネスは、パーソンズの同級生で当時のボーイフレンドだったヴィン・ファムがパートナーだったので、UNIT(ユニット)、タグラインはフランス語で "par deux jaunes"。英語だと "by two yellows"、日本語だと「二人の黄色人種による」を使いました。


フランス語を使ったのは、ヴィンがフランス語の教育を受けたベトナム人だったから。フランス語を知らないアメリカ人にはわからないだろう、ふたりの「遊び」でした。「ニガー」は黒人に対する軽蔑語ですが、黒人たち自身は使っているような感じでしょうかね。私は黄色という色が子供の頃から大好きだったので、「黄色で何か悪い?」という気持ちもありました。


UNITの始まりは、まだパーソンズの学生だった時に、手書きのTシャツを、ストリートフェアで売り始めたこと。それが面白いほど良く売れたんです。今見るとどう〜ってことないデザインかもしれませんが、当時はまだグラフィックな Tシャツや、漢字を使ったデザインは見られなかったので珍しかったのでしょう。ヴィンはファッションデザイナー志望で素晴らしい感覚を持っていて、後ではニューヨークファッション界の新人賞も受賞した人ですが、心が繊細で、急な成功に適応できず、ファッション界からは早々と姿を消した人です。


手書きのTシャツをもっとフラットに綺麗にするために、私がイラストの課題を描くのに使い始めていたエアブラシを使い始め、更にシルクスクリーンに移行しました。トップの写真は、アッパーウエストサイドのコロンバス街で毎日曜に開催され続けているフリーマーケット(蚤の市)、グランドバザーに店を出した時の写真で、この頃は自分たちでシルクスクリーンを使って印刷していました。左にいるのは日本人の同級生で、彼女は手作りアクセサリーを一緒に売りました。彼女の名前は覚えていないのですが、インテリでちょっと変わっているけど美人な子でした。今どうしているのかなぁ〜。


私とヴィンは、当時アッパーイーストにあった三愛のブティックでウィンドウ・ディスプレイのバイトをしていたので、私たちがデザインした長めのTシャツに生地のスカートをつけた手作りドレスをお店に置いてもらったのですが、これも作るそばからどんどん売れてしまいました。


しばらくして二人の手作りでは生産が間に合わなくなり、チャイナタウンのメーカーに依頼して、タグがついた本格的なTシャツを作り始めて小売店に卸し始め、更に現在タイムワーナーセンターが建っている場所にあったコンベンションセンター、ニューヨークコロシアムで行われた展示会に出展することにして、私の父から三千ドルの借金をして最小のブースを借り、Tシャツだけではなく、UNITのロゴが大きく施されフラットに畳める、スウェットシャツのようなボクシーな服も一緒に見せたのです。



そうしたら、、、。ブルーミンデールズデパートを始め全米の店から膨大な注文を受けただけでなく、カナダやヨーロッパのバイヤーからも注文が入り、私たちの初めての展示会は大成功なはずだったのですが、それは私たちが全く予想していなかった数で、若くて無知だった私たちは、注文をこなす術を知らなかったのです。


パーソンズはビジネスに関して何も教えてくれなかったので、私たちは手探りで経営とはいえない経営をしていた訳です。その頃はネットもなく、学生ビザで働いていた私たちは実際は違法経営。銀行からお金を借りることも考え付かず、相談できる人もいなかったので、私たちのビジネスは信用を落としてそのまま潰れました。信じられない話ですが本当です。


あの頃の私たちに比べて、今の若い人たちはネットで何でも情報が手に入るので羨ましいです。でも、昔の方が今より競争はずっと少なく、才能があって頑張れば成功できた時代だったのかもしれません。


懐かしい。

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